GDP下振れでも日本株高、リスク選好の海外勢が買い継続

日本の2014年10─12月期国内総生産(GDP)は市場予想を下回ったが、日経平均.N225は昨年来高値を更新した。

欧米株高でリスク許容度が高まった海外勢が、日本株への買いを継続したとみられており、海外情勢次第では、地合いが容易に反転する恐れもある。原油安や円安を賃金上昇などに結び付けられるのか。株高持続への課題として意識されている。

<海外勢の買いで昨年来高値更新>

市場のGDP予測は、またも大きく外れた。10─12月期実質GDP1次速報は、前期比プラス0.6%(年率プラス2.2%)と市場予想の0.9%(同3.7%)から下振れ。ロイターの事前調査では、0.6%以下を予測していたのは1社だけだった。

昨年11月17日に発表された7─9月期GDP1次速報では、プラス成長の予想に反してマイナス成長となり、日経平均が一時500円安となった。それほどのインパクトはなかったにせよ、「原油安効果や増税延期効果が表れるとみていた個人消費や設備投資が、期待ほど伸び なかったのは予想外」(国内証券エコノミスト)だったといえる。

しかし、16日の東京市場で失望は広がらず、日経平均は一時1万8074円まで上昇。取引時間中として7年7カ月ぶりの高値をつけた。東証1部の値上がり銘柄数は1100を超え、売買代金も2兆4327億円と比較的膨らんだ。

日本株に買いを入れてきたのは、前週に続き海外勢だとみられている。16日の米市場は休場だが、「最近はアルゴリズム取引のような自動売買も多く、休日に関係なく買ってくる海外勢は多い」(国内証券)という。

<GDPとは「正反対」の日本株買い>

ただ、日本のGDPを評価した買いではないようだ。10─12月期GDPでは予想に比べ内需が弱く、外需が強いという姿が示されたが、株式市場の反応は正反対。

値上がり上位に銀行株や証券株など内需株が並ぶ一方、自動車やハイテクなど輸出株の上値は重かった。前週までの姿と同じであり、「海外勢が出遅れセクターの買い増しを続けている」(外資系証券)との見方がもっぱらだ。

海外投資家の積極姿勢は、日本の材料ではなく、欧米株の上昇に伴うリスク許容度の回復が背景にあると、BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジストの丸山俊氏はみる。

「米雇用統計が強く、早期の米利上げが高まっているにも関わらず、米株が高い。米利上げを織り込んで しまった可能性があり、海外勢がリスク選好姿勢を強めている」という。

13日の市場で米ダウ.DJIは1万8000ドルを回復、S&P500.SPXは終値の過去最高値を更新した。

ナスダック指数.IXICも15年ぶり高値となっている。

欧州株市場でも、ドイツのクセトラDAX指数.GDAXIが過去最高値を更新した。原油価格の反発も投資家のリスク許容度を高めているとみられている。

<日本株が再注目には「賃金上昇」>

国内企業決算は期待値に届かず、GDPも市場予想を下回った。

日本独自の買い材料が乏しい中での株高であり、下値では日銀や公的年金の買いが期待されるとはいえ、海外勢が売り始めたら、抗うのは難しい。それは海外投資家が約2兆円売り越した今年1月前半の相場でも証明 済みだ。

海外投資家が取引の過半を占める中で、海外材料に左右されないというのは難しいにしても、2013年のように長期投資家を含む海外勢が日本株を継続的に買ってくれるには何が必要か──。

最近、海外投資家の意見をヒアリングしたエコノミストなどが口をそろえて指摘するのは、やはり賃金だ。

「労働市場が タイト、有効求人倍率も高い。それで何故、日本は賃金が上がらないのかとよく聞かれる」と、HSBC(香港)の日本担当エコノミスト、デバリエいづみ氏は話す。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、1─3月期以降のGDPは原油安や円安の効果で押し上げられるとみている。

しかし、日本経済の自律的回復力は別だという。

「原油安や円安の恩恵が消えたときに、日本経済の自律的な回復力が試される。それには賃金上昇による好循環が欠かせない」と指摘している。

 

「物価上昇2%」に固執 日銀黒田総裁の“暴走”が止まらない

財務省は26日、2014年の貿易収支(速報)が12兆7813億円の赤字となったと公表した。赤字は4年連続で、金額は過去最悪だ。

「円安により、原油などの資源・エネルギー価格が上昇し、赤字幅が拡大した。円安を加速させた金融緩和“黒田バズーカ”が元凶です」(市場関係者)

 黒田総裁は「物価上昇率2%」を達成するため、なりふり構わぬ緩和策に打って出ている。

「株価を上げる効果はあっても、国債を年間80兆円購入するなど、海外勢から見たら財政ファイナンスと判断されかねない。危ない橋を渡っている」(株式評論家の倉多慎之助氏)

 そんな警告も黒田総裁には届かない。金融政策決定会合後の会見(今月21日)では、物価上昇率2%の実現に関し、「(15年度から)若干はみ出る部分はある」としながらも、当初目標の「2年程度(15年度中)」にこだわりを見せた。

 ダボス会議に出席するため訪れたスイスでは24日、海外メディアに対し、「(金融緩和の)選択肢はたくさんある。技術的に限界があるとは思わない」と言ってのけた。

「黒田総裁は物価上昇率2%を達成するためなら、躊躇なく追加緩和に踏み切るでしょう」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)

 追加緩和で円安はさらに加速し、貿易赤字はますます拡大していくことになる。

「物価はある程度上昇したのだし、もはや2%にこだわる必要はない。『2年程度』という期間を引っ込め、もっと柔軟になったほうがいいのではないか。これ以上、円安が進むと、経常収支は赤字に転落する危険が高まります」(ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一氏)

 国全体の収支を表す経常収支(貿易収支、サービス収支、投資収支など)が赤字転落したら、世界の金融市場は「双子の赤字」(財政赤字と経常赤字)と騒ぎ 出す。日本は1980年に原油価格の上昇で経常収支が赤字(ドルベース)に陥って以降、年間での赤字はないが、13年下期、14年上期と連続で赤字だっ た。

「円安進行と原油価格の反発が重なったら、年間での赤字転落は十分にあり得る事態」(市場関係者)だ。

 双子の赤字は国力の低下を意味するので、海外ハゲタカ勢は間違いなく「日本売り」を仕掛けてくる。その引き金を、4月にも予想される追加金融緩和“黒田バズーカ3”が引きかねないと、市場は懸念している。